セミナーレポート

組織マネジメントは“作業療法そのもの”

セミナー名:作業療法士のための組織マネジメント
セミナー 其の一/東京編
会 場:東京文具共和会館
日 時:2018年2月10日

細川 寛将 (株)クリエイターズ,作業療法士

■セミナーの概要
去る2018年2月10日,東京文具共和会館にて「作業療法士のための組織マネジメントセミナー 其の一/東京編」が開催された。本セミナーは,一般社団法人日本作業療法士協会の元副会長である土井勝幸氏,谷川真澄氏,太田睦美氏の3名が発起人となり講演をする「OTで部下をもつマネジャー・リーダー」に向けたセミナーである。「生活行為向上マネジメント」など普段の臨床で“マネジメント”という言葉に触れる機会は多いものの,「組織マネジメント」について学ぶ機会はほとんどない状況で開催されたセミナーだけに,全国から70名以上のOTが参加した。その内容を,タイムテーブルを追ってご紹介する。

1.「OTが管理職をすることの意味」―土井勝幸氏
最初のプログラムは,キャリア初期から数多くの失敗を繰り返しながら,愚直に自らのフィールドで組織マネジメントに取り組んできた土井氏の講演。臨床で目の前の患者と対峙することだけでは,「目指すべき作業療法」を体現できないと感じ,組織マネジャーとしての道を決意。何度も行政に跳ね返されながら,日本で最初の医師以外の介護老人保健施設管理者になった話は印象的であった。こうしたマネジメントは,実は作業療法の根幹に通じるものがあるため,本セミナーを介して「普遍的な仕組みに落とし込むこと」が土井氏の目標と述べた。

2.「目標指向型組織マネジメントの実践」―谷川真澄氏
2人目の登壇者は,福井県でデイサービスなどの介護保険事業所などを複数経営する谷川氏の講演。谷川氏は「生活行為向上マネジメント推進プロジェクト委員会」の委員長でもあることから,作業療法の実践とマネジメントの関連,それに加えて起業家としてPDCAサイクル(plan—do—check—act cycle)やバランスト・スコアカードを用いた組織の目標の立て方や共有の方法,スタッフ個々に求める技能を,自身の苦労話や成功事例を交えながら述べた。谷川氏の,「OTはそもそも何にマネジメントされているのか?」という問いかけは,国がどのような意図をもってOTに期待をしているのかを今一度整理するきっかけとなった。

3.「組織マネジメントの基本」―太田睦美氏
最後の登壇者は,法人の介護福祉本部にて介護・福祉領域における事業を企画・運営・統括している太田睦美氏の講演。太田氏が約40年のキャリアで構築した経験や理論を踏まえたマネジメントや,リーダーといった用語の整理,PDCAサイクルの説明,そしてリスクマネジメントなどのオペレーション関係からリーダーとしての姿勢・あり方まで多岐に渡って述べた。また,太田氏も土井・谷川両氏と同様に,「個人や小集団を対象に直接的に介入する作業療法も,複数の個人が共通の目的の下に集まって意図的・計画的に事業展開する組織へのマネジメントも同じ」と述べ,作業療法とマネジメントの類似性を強調した。

■印象に残った事柄
受講して印象に残ったのは,3名の講師が共通して「作業療法はマネジメントである」と述べていた点である。土井氏はこの点に関して,自身が一貫してOTとして大切にしてきたものが,「人が主体的になること,その環境を整えること」であり,マネジメントそのものが作業療法であるといって間違いないと説明された。

■従事している仕事からの感想
筆者はサービス付き高齢者向け住宅の施設長に一昨年就任し,愚直に組織マネジメントに取り組んできたが,目の前の出来事に向き合うことだけに執着してしまい,失敗も多く経験してきた。今回の受講を通して,組織マネジメントは「スタッフが主体となる環境を整備する」という点で“作業療法そのもの”であり,いうなれば「組織を作業療法すること」と捉えられると気づき,マネジメントがとても身近に感じられ,非常に勇気づけられた。

講議後の意見交換会では,講師陣が参加者の質問に答えた(写真左から太田氏,谷川氏,土井氏)。

※本レポートは『臨床作業療法』2018年5・6月号に掲載されたものです。本号詳細はこちら